【書評】『ぼくんち』西原理恵子著 〜生きることについて書かれた漫画を読んで、幸せについて考えてみた〜
『ぼくんち』西原理恵子著を読みました。
この本(漫画)もめっちゃ面白いです。
キャッチフレーズ:「シアワセって、どこにある?」
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西原さんの作品は、前回感想を書いた「この世でいちばん大事な「カネ」の話」から入りました。(この本は名著なので絶対読んだ方がいいです)
【書評】『この世でいちばん大事な「カネ」の話』西原理恵子著 〜働くこと・お金を稼ぐこと・そして生きること - シークレット・イノベーション
その話を会社の上司にしたら『ぼくんち』は絶対に読んだ方がいいぞと薦められたので読んでみました。
<商品説明>
「ぼくのすんでいるところは―
山と海しかないしずかな町で―
はしに行くとどんどん貧乏になる。そのいちばん はしっこが
ぼくの家だ―」。腹違いの兄、一太。突然現れた、美しくてやさしい年の離れた姉、神子(かのこ)。そして「ぼく」、二太。クスリを売る。体を売る。金を貸す。とりたてる。この町の多くの大人たちは、そんなふうにして生きている。
神子ねえちゃんは言う。「泣いたらハラがふくれるかあ。泣いてるヒマがあったら、笑ええ!!」。ヤク中の父を亡くしたばかりの少女は、うまく泣くことさえできずに、不思議そうにこう言う。「息するたびにな、ノドの奥に小石みたいのがたまるんよ。食い物の味わからへん」。むき出しの現実を見ながら、幼い心にいくつもの決意を刻んで「ぼく」は成長していく。
とても貧乏な町水平島での、幼い兄弟(一太、二太)と、お姉ちゃん(かのこ)と、その周りの人々、近隣の人々とのやりとりを描いた漫画です。
人気のある作品でAmazonのカスタマーレビューを見ると「感動した」「泣ける」「バイブル」と多くの人が絶賛しています。
僕は「ぼくんち」を読んだ直後に
限りなく明るくで
限りなく爽やかで
限りなく寂しい物語なんだ
と思いました。
作品自体はちょっとしたギャグや笑えるエピソードも多くあります。
幼い兄弟(一太、二太)はとっても貧乏なんですが、精神を病むこともなく、お姉ちゃん(かのこ)に支えられながら、歯を食いしばり、人生に対してとても前向きに生きています。とても明るくて爽やかな作品だと思います。
なのに、読み終わった後、とてつもない寂しさにおそわれます。
「貧困」っていうのは治らない病気
西原さんは「この世でいちばん大事な「カネ」の話」でそう述べます。
豊かな人は貧しい人の気持ちがよくわからないし、貧しさの中で、人は自分より貧しい人をバカにするようになる
引用元:この世でいちばん大事な「カネ」の話 P.180
貧乏人の子は、貧乏人になる。
泥棒の子は、泥棒になる。
こういう言葉を聞いて「なんてひどいことを言うんだろう」と思う人がいるかもしれない。でも、これは現実なのよ。
お金を稼げないと、そういう負のループを断ち切れない。生まれた環境からどんなに抜け出したくても、お金を稼げないと、そこから抜け出すことができないので、親の世代と同じ境遇に追い込まれてしまう。
引用元:この世でいちばん大事な「カネ」の話 P.214
幼い兄弟(一太、二太)の家族は「とてつもない貧乏」です。
「貧乏人の子は、貧乏人になる」
今は前向きな幼い兄弟(一太、二太)が、いずれ貧乏人になり、貧乏という治らない病気にならないか心配で心配で不安なのです。
しかしこの作品には『希望』も込められています。
西原さんは負のループから抜け出すためにも「何か商売をはじめようよ」「一歩踏み出そうよ」「自分から動いて、何かを知った人間は、そこから何かを始めることができる」「"希望"を諦めないで」と伝えます。
幼い兄弟(一太、二太)が「とてつもない貧乏」から抜け出すために、自分から動き出しています。それはまさに『希望』そのものです。
この作品は『不安』も『希望』もごっちゃまぜにした作品です。つまり『生きること』について書かれた作品だと思います。
だからこそ、多くの人に響く作品になっているんだと思います。
そして、この作品のキャッチフレーズ「シアワセって、どこにある?」について、僕なりの考えも書いておきます。
「 "幸せ"とは、自分の居場所があること」
だと僕は思います。(エヴァンゲリオンみたいだな・・)
まず仕事について。
仕事について「やり甲斐」・「生き甲斐」を持てることはとても幸せだと思います。
「働けることがありがたい」
「働くことが、生きること」
この世でいちばん大事な「カネ」の話で西原さんも述べていました。
「働ける場所があること」
「自分がやった仕事で誰かを幸せにできること」
「自分の仕事を必要としている人がいること」
そう思えることが、幸せなんだと思います。
僕の大好きな曲に『彩り/Mr.children』という曲があります。歌詞が凄くいい。
まさにこれです。
やっている仕事は「単純作業」や「雑用」かもしれません。上司から丸投げされた「つまらない仕事」かもしれません。ただ、それは回り回って誰かの幸せを作っているんですよ。
そんな些細な、確かな生き甲斐が、日常に人生に彩りを加えるのです。
「自分が必要とされている仕事」はきっとあります。
「自分が必要とされている仕事」を見つけ、その仕事を一生懸命出来ることは、とても幸せなことだと思います。
そして人間関係。
家族や友人との関係です。
人間関係でも居場所があるというのはとても幸せなことだと思います。
以前、キャバクラに行く人の話キャバクラに行く人の話でも書きましたが、キャバクラに行くのは、家族・家庭の中で居場所がないからなのかもしれません。
大学教授になぜキャバクラに行くのかを聞いた時の話 - シークレット・イノベーション
お互いに信頼・尊敬しあい
「この人の為に頑張れる」
「この人がいるから今の自分がある」
と思いあえる関係を築ける事は素晴らしいことだと思います。
そう思える人が1人でもいれば、それはとても幸せな事だと思いますね。
★ ★ ★ ★
『ぼくんち』はとても面白い作品なので、ぜひ読んで見て下さい。
漫画なので読みやすいですし、3巻なのですぐ読めます。
そして「シアワセって、どこにある?」か、考えて見て下さい。
【紹介した本】
僕は文庫本で読みました。カラーだし、小さくて持ち運びもしやすいのでお薦めです。
オールカラー全3巻だったものを白黒の普及版として1冊にまとめたものです。
安いのですが、できればカラー版で見て欲しいです。
オリジナルの全3巻セットです。
ちょっと高いので、値段が気になる人は文庫本をお薦めします。
ぼくんち コミック 全3巻完結セット (スピリッツとりあたまコミックス)
- 作者: 西原理恵子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1998/02/01
- メディア: 単行本
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【関連図書】
僕の大好きな1冊。
読んでない人はぜひ読んで下さい。
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