『私はキラキラ女子を証明しようと思います。』

 

「コリドーでナンパしてきた新卒くんはどうなったの?」

「うまくいきました。クリスマスはバッグを買ってもらえるもんだもん、と言ったら22万のmiumiuのバッグを買ってもらえました。」
 
「この前、知り合った電通君は?」
「誕生日にコートを買ってもらいましたよ。好きなものを買っていいよと言われたので、前から気になっていたコートをおねだりしました。」
 
「ペアーズで出会った、コンサル君はどうなったの?」
「このピアスです。数回デートしましたが、キスだけでやらせなかったら、サプライズとして買ってくれました。デザインがあんまり好きじゃないんですけどね。」
 
色んな男に貢いでもらったものを、女子会でみんなに見せた。
みんなはやれやれと言った表情で私を見て笑った。
私も笑い返す。
 
週末のコリドーで、路上でおにぎりを食いながら、ペパリーゼを流し込む。
コリドーは今日も酔ったサラリーマンでいっぱいだ。
 
「この東京の街は、私達のでっかいパトロンみたいなもんですね。」
「そぅね、無料のね。」
 
彼女達と出会うまで私は、遊び人の男に騙される普通の女性だった。いいなと思った人との恋愛は、彼らからすれば全て遊びの恋愛だった。私が尽くせば尽くすほど遊ばれた。
 
しかし、1年前とあるパーティーで知り合った港区女子達が私の人生を変えた。彼女達は男を魅力するテクニックをたくさん知っていた。
 
私は、世界最大の半導体メーカー・インテルの元CEO、アンドリュー・グローブの言葉を思い出した。
 
“Technology will always win.”
(最後にはいつだってテクノロジーが勝利する)
 

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★ ★ ★
 
  
定時で仕事を終え友達との女子会まで、銀座でブラブラとショッピングをする。
今度の結婚式に着ていくドレスは何にしようか。と考えていると、LINEが届いた。
 
「この前はありがとう。
 今度、時間がある時に飲みに行きたいな。
 来週の月曜日はあいてる?」 ケーゴ
 
ケーゴさんは蔦屋で勉強をしている時に話かけられた。情熱的な人で話も面白くLINEも交換した。その場で今後飲みに行こうと約束した。
 
「はい、大丈夫です(^o^)/♪
 楽しみです!」
 
そう返信した。
次の月曜日、品川の『T.Y. Harbor』でデートをした。
 
ケーゴさんは初めてあった時と同様、情熱的な人で話が面白かった。「愛と恋の違い」の質問をしてきた時は「何言ってんだこいつ」と思ったけど・・
でも、仕事も真面目にしている素敵な人だった。
 
楽しくて2件目にも行った。
でも、その後、タクシーにのり、初めてのデートなのに、ホテルに誘われた。
 
初デートではしちゃダメ
多くの女友達がそう教えられていた。
 
「まだあったばかりだし、今日は無理ですよ・・」
私は拒んだ。
しかし、ケーゴさんはタクシーでも手を止めなかった。
 
「『いいな』と思った子をもっと知りたいと思うのは普通でしょ?俺は身体がつながることが悪いことだと思ってないよ」ケーゴ
 
私の気持ちも考えず意味不明な事を言っていた。
体は反応したが、理性が拒んだ。

1時間半タクシーで攻防した後、私は何とか家に帰った。
 
まただ
ケーゴさんもやっぱり手の早い遊び人なんだ
私の体目当てなんだ
 
 
★ ★ ★
 
 
ある日、友達の友達に誘われたパーティーでくるみと出会った。
 
くるみはプロ合コン師だった。合計400回もの合コンを経験している。

当然、数百人レベルでデートもしている。色んな素敵なお店に連れて行ってもらっていた。私の知らないハイレベルなお店もよく知っていた。

お店のレベルで男のレベルを判断することもできる。ナンパされるべき場所や、出会いに熟知している。コラムなんかもやっているらしい。

そして、何より男を楽しませるのが上手だった。私から見たくるみは、キラキラと輝いていた。
 

くるみと仲良くなりたかった。
パーティー終わりにくるみと連絡先を交換した。
 
そして彼女と一緒に合コン、パーティーに参加するようになった。
 
そう、そこから、
私の人生はキラキラと輝き出したの。
 
 
★ ★ ★
 
 
くるみはとても聡明で、自分を売り出すのがうまかった。Facebook、twitter、ブログなども積極的に活用し、キラキラしている女友達と情報交換をしていた。
くるみのまわりには港区で遊ぶ可愛くてキラキラした仲間が自然と集まっていた。
 
くるみの妹のちえ
可愛くて芸能人レベルのチワワ先輩
巨乳でグラマラスなばびろん
口説かれ師のレイまゆ
 
彼女達はみんなキラキラ輝いて素敵だった。
私の鎮撫な質問にも、優しく答えてくれた。
 
毎回ご馳走して貰ったり、デートの度にプレゼントを買ってくれたら、それって、やっぱり、その、最後までするんですか?
 
ご馳走したかったからご馳走したんだろうし貢ぎたかったから貢いだんだろうし、同じ時間を過ごせただけでも幸せじゃない?って感じ。したくないことしたほうが負けです。よって、どれだけ貢がれてもヤらせる必要無し。 チワワ先輩
 
 
街で声をかけられて、いわゆるナンパについて行ったりすることはあるんですか?時々、素敵だなって思える人にも声をかけられたりして。面白い話やゲームをたくさん知ってて一緒にいて面白かったんです。ホテル行っても、いいかなぁなんて思っちゃって。あっ、でも当然行ってないですよ!
 
街ナンパで出会った人とセックスをしてしまったことがある友人も少なくないわ。でもね、忘れないで。ナンパ師は、その面白い話やゲームをルーティーン化して誰にでもするの。彼らみたいにナンパにはまるのは、心の闇があって「劣等感とプライド」に支配されている人ばかり。キモい人ばかりよ。 レイまゆ
 
ナンパ師にだけはついていかないように気をつけてね。背が高くも、顔がカッコよくもなく、おまけに経済力もないわよ。自分のビハインドを小手先の恋愛テクニックによって克服したいと考えている男性なの。ナンパしてくる男なんて貧乏人だし絶対についていっちゃだめ。 ちえ
 
貧乏人って言っても、そんなに世の中、お金をもってる男性っていないんじゃないですか?不景気だし。ワーキングプアーなんて言葉もあるじゃないですか。いつもいつも奢ってくれる男性なんてそんなにいないんじゃ・・・
 
そもそもね、正直な話、年収が1500万超えたあたりから自分より年収が低いであろう異性は自然と身近にいなくなるのよ。いてもコンビニの店員さんとか宅急便の配達員さんくらい。
だから異性に求める年収の話とかよりも年収ありきでほかのスペック寄りの話になるし、ワリカン問題とかそもそも問題に上がらないよね ばびろん
 
男が「若くて可愛い子なんて腐るほどいる」って言うように、わたしたちからしたら「私に貢ぐハイスペ金持ち男なんて腐るほどいる」よ。特に25なら、顔が可愛ければまだお金持ち達にもモテまくるだろうし。リミットを正確に認識してれば勝ちだと思う。 チワワ先輩
 
全て言葉がキラキラして素敵だった。
ナンパからはじまる恋なんてない、そんなの妄想なんだね、やっぱり。
 
貢いでくれるハイスペなんて、夢の国の物語だと思っていた。
でも、彼女達と一緒にいて、
私も夢の国の住人になれたの。
 
 
★ ★ ★ 
 
 
最初は不慣れだった私も段々とキラキラできるようになってきた。
 
西麻布パーティー帰りに交差点で出会ったゴッホには、タクシーで新宿まで送ってもらった。タクシー代のかわりに手をつなぐことを許したら、キスをしてこようとした。最悪だった。
こんな事なら、パーティーで出会った変な博多弁(?)を使うヒデヨシとかいう男にタクシー代の1万を貰っておくべきだった。あー、でもあいつは貧乏そうだから無理かなぁ。
 
ペアーズで出会った渡辺には、高級和食料理を奢らせた。会計の時に財布を出そうとしたら自分から「いいよいいよ」と言ってくれた。
お店を出て「ありがとうございました。とっても美味しかったです。」と笑顔で言うと、満更でも無さそうだった。バーで飲み直そうと誘ってきたが、断って帰った。あの時の渡辺の悲しそうな表情を今思い出しても笑える。
 
この前スタバで声をかけられた自称年収2億の男には、寿司を奢ってもらった。高くて美味しかったけど、デート中に手を握られてウザかった。帝国ホテルで軽く飲み直したが、その後、タワマンに連れて行かれそうになったので、何とか逃げ帰った。お金は当然1円も払っていないが、パワープレイに辟易した。彼の話は思い出しても笑えるので次の女子会のネタにしよう。
 
 
「ハイスペ合コン」
「有名人もくるホームパーティー」
「婚活サイト」
私はありとあらゆるところでモテて、口説かれるようになった。
 
私は彼らを搾取してるんだろうか?
いえ、彼らを愛してるんだと思う。
 
チワワ先輩の先輩の話を思い出した。
 
港区長いとあるお姉さん。ゲスな経営者もヤリチンもあらゆる男性をニコニコ笑顔で受け入れて仲良くして手のひらで転がして搾取しまくりながらも私は彼らを愛してると言う。何故彼女はノーストレスでゲス男性を転がし続けられるのか、最近わかったんですが彼女は男が全員犬に見えてるらしい。 チワワ先輩
 
彼らは全員可愛い私のワンちゃんで、私のパトロンなの。
彼らが私をキラキラ輝かしてくれるの。
 
まわりにいる結婚できない、彼氏ができないと悩んでいる女とは違う。
私はいつだって結婚できる。

ほらまたLINEがきたわ。
「アイタイ」だって。

私の人生はずっとキラキラ輝き続けるの。
 
 

そんなある日、タカシとのデートでありえない事が起こった。


彼は遅刻をしてきた。
私とのデートに遅刻してくるなんてありえない。
 
連れて行かれたのは、安そうなアジア料理屋だった。
高級フレンチか高級イタリアンが初デートの基本でしょ?
泡(シャンパン)がないお店なんてありえない。
こいつは、マナーも守れない男だ。

 
私、今、弁護士さんと経営者さんから言い寄られてるんですよ〜
私は全然興味無いのにデートに行こうってうるさいんです。ほんと、やになっちゃう。
他の犬の話をした。
ほら、お前もくいつけ。
私にしっぽをふって、私に媚びろ。
 

しかし、タカシは尻尾をふってこなかった。
それどころか、あろう事か2人で7000円という、ランチ1人分にも満たないお会計なのに、3000円も払わされた。ありえない。
 

悔しかったから、次は奢らせてやろうと
お礼のLINEを送ったのに返信なしだ。
本当に最低な男だ。
 
今思い出してもムカムカする。
 


★ ★ ★
 
 
港区女子のみんなとキラキラ飲み会をした。
前のホムパで出会った男の話や、今度の合コンの話でいつもみたいに盛り上がった。
 
でも・・
チワワ先輩は、次の合コンには来れないらしい。港区から足を洗うんだって。
 
何で?こんなに楽しいのに?
私はそう思った。
 
「私、結婚するの。」チワワ先輩
 
「えっ経営者の人?どの人、どの人?」
 
「ううん、普通の人。普通だけど、誰よりも優しい人。お金はそんなに持ってないけど、でも、仕事は一生懸命してる人。何なら私が働いたっていいし。」チワワ先輩
 
「えっ?えっ?
前に貢いでくれるハイスペ金持ちなんて捨てるほどいるって言ったよね。
奢りたいやつに奢らせればい言ってたよね?
東京にいる男は犬でパトロンだって。一生養ってくれる人にすればいいじゃん。チワワ先輩なら簡単じゃん」
 
チワワ先輩は言った。
 
「正直働かなくてもキラキラ女子やってれば東京では空からお金降ってくるから生きていけるけどそれでもちゃんと働かないとどんどん駄目になる。」チワワ先輩
 
「私は多くの人から色んな物をもらったし、美味しいものを食べさせてもらった。とっても楽しかった。でも、それだけじゃダメだと思うの。」チワワ先輩
 
「誰かに貢いで貰って、人に作って貰った、そんな上辺だけじゃダメなの。ちゃんと働いて、自分で考えて、成長していかないとダメだと私は思うの。」チワワ先輩
 
「でも、みんなと遊んだ時間は本当に一生の宝物だよ。本当に本当にありがとう。」チワワ先輩
 
 
チワワ先輩が結婚なんて、自分の事のように嬉しいわ。おめでとう。ぐすん」くるみ・ちえ
 
くるみとちえが泣いて喜んでいた。
そして、みんなでチワワ先輩の結婚を祝福した。
 
 
「ちゃんと働かないとどんどんダメになる。」
チワワ先輩は確かにそう言った。
その言葉が私の脳裏に残った。

 


翌日、ばびろんが捕まった。詐欺容疑だった。
ヤフオクで、ブランドコピー商品を本物と言って売っていたらしい。
 
ばびろんが何でそんな事をしたかは分からない。
 
ばびろんは誰よりも羽振りがよかった。
ツイッターで自撮りの写メをいくつも載せていた。
有名な企業に勤め、そこら辺の男より稼いでいた。
でも、キラキラできるほどの給料ではなかったんだって。

 
キラキラするために、貢がせるだけじゃなくて、詐欺をしたの?

キラキラするために、貢がせるだけじゃなくて、人を騙したの?

キラキラするために・・・
 
 


『キラキラって何だろう。』
 
ブランド物を身にまとい西麻布のホームパーティーで経営者や芸能人と飲む。高級フレンチや懐石料理を奢ってもらい、ホテルのスイートで飲みなおす。そして、タクシー代を貰って帰る。他人から見たわたしは、キラキラして、誰からも羨ましがられるような生活。
それが本当に求めていたものなの?
 

二日酔いで会社に行き、つまらない事務作業を淡々とこなす。何度も化粧直しをして時間を潰す。
17時の定時が終わるとそそくさと会社を後にし、化粧を直して「今日はどんな男と出会えるかな」と思いながら町に繰り出す。

私から見た私は、何にも変わってない。
かっこ悪い普通のOL。
内面は全然キラキラしていない。



★  ★  ★  ★  
 

「自分で考える、自立した女性が好き」
社会人になって初めて付き合ったトリケラトプスみたいな顔をした彼氏がいつも言っていた。

当時、彼は研修医だった。努力して努力して、勉強して勉強して、やっと夢を叶えた人だった。

女性慣れもしてなかった。
「可愛すぎて、ムカつくわ(笑)」
何かある毎にそうやって褒めてくれた。


研修医として、一生懸命働いていた。
毎日遅くまで働いて、時には当直のバイトまでした。
 
「仕事を一生懸命して、自分の仕事に誇りを持つこと。働く事の難しさや、お金の価値を知ること。そうしないと、人は精神的な自立は出来ない。」
トリケラトプスはそう言っていた。

当時の私は「仕事なんてこなせばいい」と思っていた。仕事ばっかりしているトリケラトプスとは、考え方があわず結局別れた。




ねぇ、トリケラくん。
今のわたしはどうなんだろう。

 

「ちゃんと働かないと、どんどんダメになる。」
チワワ先輩は確かにそう言った。
 

今私が身につけているものは、
私のお金で買った物じゃない。
全部他人から与えられた、キラキラなの。


私も、もっとちゃんと働けば、
私から見た私もキラキラするかな?
 
外見だけじゃなくて
内面もキラキラするかな?
 



世の中で言われているキラキラ女子。
ブランド物を身につけ、成功者と言われる人達と豪遊する。
他人から見てキラキラ輝いている女子。


そうじゃないの。
私が本当になりたかったのは、
内面がキラキラ輝く素敵な女子なの。
 

私はキラキラ女子を証明しようと思います。


★ ★ ★
 
 
その日から、私は仕事をしっかりとするようになった。化粧直しの時間も無駄にとらなくなった。仕事終わりに、資格の勉強も始めた。
 
「その新しいプロジェクトに私もアサインして下さい。」
 
自らプロジェクトメンバーに志願した。仕事は忙しい。責任もあるしプレッシャーも感じる。
でも、プロジェクトが順調だと嬉しいし、何より仕事が楽しい。
毎日が充実している。

自分が頑張って働いたお金で飲むビールは美味しかった。シャンパンよりずっと。

自分の内面が少しずつキラキラ輝きだしてきた気がする。
 
 

 
プロジェクトの報告定例から帰るとLINEが来ていた。
 
「久しぶり。今日暇?男友達と銀座で飲むんだけど、遊びにきなよ。男4人で全員外銀です( ^ω^ )」外銀くん

 
私は席を立ち、トイレの個室に入り、慣れた手つきで、最近知り合ったお酒好きの3人組、りの、まこ、みおとのLINEグループ「♡酒豪ガール♡」にLINEを送った。
 
外銀くんとの飲み会です!
みんな集合〜(((o(*^▽^*)o))))
<スタンプ>
 


鏡で自分の姿を確認した。

化粧が取れかかってる。なんてひどい顔かしら。
念入りな化粧直しが必要ね。
化粧直しの時間も入れて、18時には仕事を終わらせないと。
 
頭の中で仕事のタイムスケジュールを組み直し、私は再び仕事にとりかかった。
 

 

ぼくは愛を証明しようと思う。

ぼくは愛を証明しようと思う。

 

 

 

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